制作記録①

この不思議な伝承をモチーフに制作をしようと決め、調査を始めてからしばらく経つが、実は何を描くのかはなかなか決まらなかった。

資料として残っているものはほとんどない。

神社もない。

祭礼も確認できない。

多々良神の姿について書かれた資料も見つからない。

つまり、「これが多々良神だ」と言えるものが何一つない。

最初は風景画にしようかとも考えた。現地で見た山や、古い集落跡を描けば、それだけでも作品として成立する気がしていた。

ただ、それでは何かが足りない気がした。調査を進める中で、何度も目にしたのは「火」という言葉だった。

火の信仰。

燃やすという行為。

そして、「残さない」という考え方。

多々良神そのものは見つからなかったが、火だけは何度も資料の中に現れる。

そこで、火そのものを作品の中心に据えることにした。

問題は、その中に何を描くかだった。

何枚かラフを描いてみたが、炎だけではどうしても画面がまとまらない。

試しに、人の姿を描き加えてみた。

すると、不思議なくらい画面全体の印象が落ち着いた。

性別や年齢に意味はない。

ただ、炎の中に立つ人物という構図が、一番この作品らしいと感じた。

今思えば、それが今回の作品の始まりだったのかもしれない。

これから本格的に制作へ入ろうと思う。